42|181007|東京

 「ツトメニンの世界をなめないで。」ランチタイムに彼女は言った。やさしい口調で、でもはっきりと。

 

 選択肢は目の前に無限と差し出されているようでありながら、実際のところ幾つかの限定的なものなのかもしれない。ないものねだりの甘えた自分が調子よく顔を出してきて、ぼくのなかで優勢なポジションをとろうとしていたかもしれない。きっとぼくたちは何者にでもなれるというわけではないのであろう。ぼくはぼくになっていく道の途上にありながら、どの瞬間を切り取ったとしてもぼくはぼくでしかない。

 

 沖縄で活動を続けるのですか?これからも会社経営をやっていくんですか? ここ1年あまり何度となく聞かれてきた。正直言って分からない。ぼくはまだそのことに向き合うに足る余白を持ち合わせていない。

 

 どの地域で、どんな器で、どんな活動をしていくのかは分からない。けれど、今何をすべきなのか、当面何をしていきたいのかについては比較的明瞭であり、今進むべき道について意思決定は済ませている。

 

 そう言いながらも、ここ最近はうろうろと所在なげにしていたかもしれない。確かに不安や恐れは後から後からやってきて、弱い僕を惑わせる。どこかに安易な抜け道があるんじゃないかと鵜の目鷹の目で探していた自分がいたかもしれない。

 

 はるか先からリレーされてきたバトンは、すでにぼくの掌にある。それはとても個人的なものであり、その価値の軽重を測ることはできない。事実と経験と直観の積み重なりから、ぼくはそれを信じてみようと思う。そしてぼくは肚にぐっと力を入れ、淡々黙々と歩むべき自身の道を見定めようとする。