87|181121|函館

 沖縄を出て36日目。札幌、大沼公園、札幌、東京、湯の川温泉、函館とめぐり、明日いよいよ沖縄に帰る。日中はホテルでノートを介して自分に向き合い、紅葉や温泉、海産物などを楽しみ、贅沢な時間を過ごしたと思う。

 

 旅の当初には大学卒業前の2001年を書いていたのだが、今は2008年頃が中心となっている。約1ヶ月で7年分の年齢を重ねた感じもするし、自分ごとながら20代前半と比べると随分と分別がついてきたように感じる。しかし自己中心的なのは相変わらずだ。これから実年齢まで筆が進んだとしても、それは変わっていないかもしれない。

 

 これまでのペースと見取図を参考に、約束の日までのスケジューリングを具体的に計算してみた。どうやらギリギリ間に合うかどうかのペースのようである。実際のところはやってみないと分からないからこそ、いい意味で緊張感が出てきている。今できることに集中し、期日内にやり遂げようと意を新たにした。

 

 心の底に沈殿しているものを表にかき出し、陽のもとに晒すことができれば、きっと何かしらが明らかになるであろう。その直感を信じてここまで進んできたし、今さら元いた場所に引き返す勇気も根気もない。良くも悪くも、引き返せないところまではたどり着いたのであろう。

 

 このことが吉と出るか凶と出るか、よく分からない。しかし現時点でもぼくの身体感覚には若干の変化の兆しが感じられるし、似たような出来事に対しても以前と異なる反応をするようになっている自分を発見することもある。様々な物事に固執していたかつての自分と比べると、随分と生きやすくなったように思うし、そんな自分をそれなりに気に入っている。ぼくは今の自分を好きになるために、過去の自分とひたすらに向き合っているのかもしれない。

 

 今日は函館最後の日。夕方から家族への函館土産を買い、老舗の洋食屋で昔懐かしの洋定食とカレーライスを食べ、函館山に登った。函館山は前回と比べて人が少なかった。カイロ3個を手にして寒さに耐え、100万ドルの夜景を楽しんだ。今回は家族に見せるための映像を撮ることもできた。

 

 函館市が行ってみたい市町村ランキングでナンバーワンになったらしい。それほど函館に人気があるとは知らずに来たのだが、ここを選んで良かったと思う。居心地が良く、仕事もはかどった。夜景も洋風な町並みも海鮮ももちろん格別だったが、朝にホテルの窓から見える空がとても印象に残っている。

 

 それは沖縄の空とは違った美しさがあった。沖縄に降り立つと、ぼくは真っ先に空を見上げる。高く青く広い空がそこにあることを確認し、ぼくは自分が沖縄に戻ってきたことを実感する。そして沖縄そばが無性に食べたくなる。

 

 函館の空はそれほど高くはないかもしれない。遠くに海が見え、海と空との境目があいまいな澄んだ薄水色をしている。澄みきった清らかな空気がここには流れている。いつの日か愛する家族を連れて、函館そして北海道に戻ってきたいと思う。

 

 何はともあれ、3637日の長旅はこれで終わる。今はとにかく、逃げずに歩き続けることだけはできたことにホッとしている。

 

 そしてぼくはやっと家族のもとへと帰れるのだ。帰ることができる場所があることは、何より幸せなことなのかもしれない。