104|181208|広島

 祖父母のところに行ってきた。あれほど小さい頃に可愛がってもらったのに、ぼくが病気になった12歳以後の二人に関する記憶はほとんどない。祖父は高校1年春の修学旅行の直前に亡くなり、祖母は沖縄に移住してから数年経った春に死んだ。祖母の葬儀の日、式場近くの桜が満開だった風景だけがやけに記憶に残っている。

 

 祖父母に感謝の一言も伝えたことがない。葬儀の記憶もほとんどない。祖父が亡くなって一時期、祖母が大阪の実家に暮らしていたことがあった。そのときもろくすっぽ祖母と正面向き合って話したことはなかったように思う。時折ぼくはボケてきた彼女に冷ややかな目線を向けたことすらあった。ぼくはどこまでも自己中心的だったし、それはもしかしたら今でも変わっていないかもしれない。

 

 ろくでもない人間だなと改めて思う。時計の針が元に戻ることはないし、きっと今でも、ふとしたときに誰かを傷つけたり、恩を仇で返したり、好意を踏みにじったり、誰かの不快な思いを引き起こしたりしているに違いない。

 

 そんなろくでなしでも、あの祖父母が応援してくれていたことを思った。今も変わらず応援してくれているのだろうかと思うと、なんだか泣けてきた。何をやってどうやって生きたっていいんだよ。彼女たちがそう言ってきてくれたから、ぼくは誰かの役に立てる人間になっていきたいと思えたのかもしれない。