69|181103|大沼公園

 朝、空にはたった一つの雲もなく、ただ青空が広がっていた。そしていつもの駒ケ岳はそこにある。散策したい気持ちをおさえて、日暮れまで仕事に集中する。窓の外に広がる木々は、紅から黄へと色味を変えている。露天風呂に入り、1日の疲れを癒す。ここに滞在するあいだ、思うようには歩を前に進められなかったように感じてきた。目の前には自然しかなく、何とも言えぬさみしい時間を過ごしてきた。今となって振り返れば、この環境だったからこそ自分と向き合えたのかもしれない。目の前にどんと存在し、揺らぐことのない大自然。毎日のように見上げた駒ケ岳。紅葉から落葉に至る時季の露天風呂。そうか、すべてこれで良かったのだ。そう思えた。

 

 日暮れ後に、記憶の世界に潜っていくことは今のぼくにはできそうにない。先は長いし気は急ぐ。しかし、きっとそれでいいのだ。陽のあがるうちに自らの暗部をのぞき込み、それをおもてに晒す。それを淡々と続ける。それをやり続ければ、いつか終着点へとたどり着くのだろうか。わからない。しかし、今はそれをただやり続けるしかない。それでいい。そしてそう思えば、ますます時間は限られている。限られた時間をいかに過ごすか、もっと意識を向けてみてもいいのかもしれない。

 

 この10日ほど、紅葉の木々に見守られ、いろんなことを考えた。いつしか窓から望むこの風景に愛着をもってしまったようである。しかしぼくには今からここを訪れる寒さと孤独にはとても耐えられそうにない。この仕事が落ち着いた頃、きっと戻ってこようと思う。