103|181207|広島

 広島に来てから、日中は一度も出歩いていない。ホテル徒歩圏内にある祖父母のお墓にも顔を出していない。仕事の都合で時折オンライン会議をするぐらいで、あとは一人で黙々とやっている。楽しいわけではないし、右手は痛いし痒いし、体調が良好というわけでもない。しょっちゅう鼻をかんでいて、目の前にあるティッシュペーパーはすぐになくなる。もちろんその都度補充しなければならない。どうにかノルマをこなそうとしているのは、それがどこかしらぼくの心を落ち着かせてくれるからだ。

 

 今のぼくには、それ以上にやることが見当たらない。コミットする人もぼく以外には誰も見当たらない。そのことはぼくを時折ものすごくさみしい気持ちにさせる。あらゆる決定権がぼくにあるということが、ぼくをとても不安で居心地の悪い気分にする。だがとにかく、足を前に出し続けなければならない。手を動かし続けなければならない。ぼくは決めたことを決めたようにやろうとしている。

 

 こうして書いているのも、自分自身を励ますためかもしれない。自分がどうしたいかは誰より自分が知っているはずだとは思うが、実際のところはどうなのだろう? いずれにせよ、ぼくは現実のさみしさや厳しさに目を背けたくなる。そんなひ弱でか細い自分はいつだって現れる。ぼくはそんな自分と対峙するために、これを書いているとも言える。あるいはそんな自分でも愛してやろうじゃないかという試みでもあるかもしれない。

 

 

 今日で、2012年春まで書き出した。言葉どおり、心の奥底に沈殿している何かを掻き出すように書いている。こうして掻き出してみないと、そこに何があったのか、何があるのかを認識することができない。ぼくは自分のことを理解したいのだ、もう少し、もう一歩でも。

 

 明日からいよいよ次のフェイズに入る。一区切りとなる出来事も含めた、いうならば前半生の最終章だ。果たしてぼくは、身近に起こった様々な出会いや出来事に、どこまで俯瞰しながら接近していくことができるのであろうか。お風呂に浸かりながら、当時のいろんなことを思い出していた。